
「道租神」の前で一緒に写真を撮ったら、相棒が「老けたなあ!っていうか疲れた顔してる!」と言ったのだが、返す言葉がとっさに出なかった。
「だから来たんじゃない!」が正しいリアクションであったのだが、いずれにしても、少々疲れた心と身体には、アルプスの清らかな空気と、キンキンに冷たい湧水が良く効くのを知っているので、相棒を口説き、安曇野にサイクリングに来たのである。
実際、最近2人とも何かと課題多く、恒例となった「スーパー・クレイジー猛暑」からも一刻も早く脱出したかったのだが、もたもたしているうちに8月になり、やっと実現したのだ。

道祖神の前で写真を撮ったのは初日の午前中で、想定外の暑さの中を自転車漕いだので、相棒からはぶつぶつ文句を言われ、それも「老け原因」だったのかもしれないが、その後は、予定どおりキンキンに冷たい水の中ではしゃぎ、蕎麦にワインと、信州名物もたっぷり堪能し、すっかり元気になったのだ。
「ひまわり」のロケ地巡りの人波も消え、「暑い中自転車漕ぐ奇特な2人」と、地元のおばさんの好奇の眼差しを一身に受けた程、静かな夏の里であった。
有明山は見えたが、残念ながら、常念岳は雲の中に隠れ、姿を見せてくれなかった。でも、どこまでも続く緑の絨毯は眼に優しく、せみ時雨を聞くうちに日常のことはどこかに行ってしまった。
また秋に行きたいなあ。

アルプスに積もった雪が、やがて地表から大きな音をたてて湧き出る。
川沿いに自転車を走らせていたら、アウトドア・クラブの人から声をかけられ、湧水群を水源とした細い流れに足を浸す。相棒と我慢比べだが、すぐにあまりの冷たさに勝負付かず。
流れから上がり、カヤックの話をしていたら、懐かしい人の名前が出てきた。狭い世間である。

あずみの公園の水槽に信州サーモンが泳いでいた。「信州サーモン一家」の説明書きがほほえましい。お父さんはブラウントラウト、お母さんが虹鱒、出来た子供が。。。

「良い水」においしい蕎麦は約束ごとか。穂高のギャラリーのような外観のお店。
水蕎麦が付いた”もり蕎麦”。ぷっくりしたわさびを2人で摺りあう。摺り方によって辛さが異なるのが面白い。
ここが今日の終着であれば、ぜったい「桜肉かつ」を肴に日本酒を楽しんだだろうな。

松本市内の老舗のお蕎麦やさん。店先で湧き水にキャベツが踊る。食べ終わってからこれに気が付いたのだが、冷えたキャベツに塩を振っていただくのは最高なのだ。

旅の終わりは、夕暮れの旧開智学校。
地元のおじさんに「どこからいらしたのか」と聞かれ、思わず「松本の姉妹都市からです」と答える。旧祭司館の外壁に西陽がさす。